(Martin Orford ソロ)
THE OLD ROAD 
2008

日本盤は、輸入盤に帯と解説を付けた仕様で、解説を書いている本間知夫氏はおいらのマイミクさんだったりする。IQの日本人ファンにとって、世間はあまりにも狭い(笑)。
非常に情報量が多く、解説者の個人的な感想を書くスペースがないほど充実した解説になっている。CDのライナーは、それを読んで買おうかどうか決めるものではなく、すでにCDを買った人が目にするものなのだから、本当はこうでなければならないと思う。

聴いてみると、前作はいかにもプログレバンドのキーボード奏者のソロアルバムでございという雰囲気だったが、今回はIQ脱退後ということもあってか、逆にゲストミュージシャンたちとのバンドとしてのまとまりが重視されている。「ジ・オールド・ロード」というタイトル通り、プログレよりは比較的シンプルなロックであることも、キーボードをいっそう脇役的な役割にとどめているのかもしれない。

マーティンは本作を最後に音楽界からの引退を表明しているが、新日本プロレスで普通にプロレスをやってれば世界一だった初代タイガーマスクがあっさりとやめてしまったのに似て、天才ゆえの一種の思い込みの強さのようなものを感じてしまう。
当時のことだからすごく儲かっていたはずの初代タイガーでさえやめてしまうのだから、もともと儲かっていたとは思えないマーティンならなおさらかもしれないが、たしかにインターネットを介した違法コピーは音楽家にとって由々しき問題には違いないけれども、IQのようなマイナーなバンドにインターネットが果たした役割もまた計り知れないはずだ。
事実、ネット注文しなければCDだって手に入らないではないか?

彼はIQのビジネス面における代表みたいな立場だったし、何か、人には言えないようなイヤなことがあったというのが本当のところではないのかなあ。そして、IQをやめるからには、それ以外の音楽活動からも全て手を引きますという、彼なりのオトシマエを示しているような気がしてならないのだが。