pH7 1979

「pH7」と言いながら、実は8枚目のソロアルバム。
ピーター・ハミルの頭文字と同じpH(ペーハー)は、ご存知のように酸性/アルカリ性の度数を示すもので、pH7は「中性」を表す。

前作の「フューチャー・ナウ」と次作の「ブラックボックス」に挟まれ、印象としてはちょっと地味なアルバム(ジャケットも地味)なのだが、繰り返し聴いてみると、実は粒よりの傑作ぞろいである。
仕事と金、核戦争、福祉問題、政治家など、ハミルにしてはめずらしく社会問題をテーマにした曲が多い。

彼の永遠のテーマは「自我」であるが、「イン・カメラ」が徹底的に自己の内面に向かおうとしたのに対し、5年後のこの作品ではベクトルが外向きになっている。
アルバムタイトルは、自我のバランスを保つ「中和」を意味しているのであろうか。

詩の変化はヴォーカルにもサウンドにも影響を与えていて、とてもVdGGの解散が1年前のこととは信じられないほどそのイメージは払拭されている。
もはや「VdGG作品とハミルのソロ」という比較は成り立たなくなり、本作においてハミルの現在に至るスタイルの基本形が完成されたと言えるのではないだろうか。