1999/5/14 第6回扇辰落語会

 
 5月14日(金)、本郷の老舗旅館「鳳明館」にて、今年最初の扇辰落語会が開催された。
 この旅館、断定はできないが、どうも25年前にとしちんが修学旅行で東京に来たときに泊まった旅館くさい(笑)。今でも1階のロビーには東京の土産物が所狭しと置かれている。建物は明治時代のもので、当時も大変古いという印象を受けたが、25年たって、さらに古くなっているとは感じなかった。ここまで古いとそれ以上古くはならないものらしい。
 従業員の接客もとても丁寧で、今までの会とは雰囲気が違う。落語をやると伝えたら演台や屏風までしっかり準備してくれた上に、箸袋にも「入船亭扇辰落語会様」の文字が(写真下)。

 今回は扇辰が「にっかん飛切落語会」努力賞を受賞したお祝いの会でもあり、扇辰落語会スタッフ一同からは扇辰へ、お祝いとして浅草「帯源」の帯を贈呈。(おいらも5000円出してます・・・(^^;))
 「恥ずかしいから」という理由で今まで一度も顔を出さなかった扇辰のお兄さんも、ご夫妻で来場(写真下)。また、珍しいところでは「としちん父」の姿も(笑)。


左:としちん父 右:神保龍太

 
会場には艶やかな着物の女性や、ナイスミディ軍団の姿も!

 素人落語家の「扇辰に挑戦」コーナーは前回で終わってしまったので、扇辰は柳家小三治の弟子“小ざる”(前座)を連れてきた。初めてプロの噺家が2人登場するわけだが、なぜかとしちんは「前座の前座」として高座に上がることになっていた。

 しかし、この日の演目はとしちん「軒付け」、小ざる「千早振る」、扇辰「長屋の花見」と、素人のとしちんがいちばん大ネタをかけるという異常事態!

 「軒付け」はおいらが枝雀ネタの中で一番好きな噺。これは非常に難易度が高くて、いつもだったら絶対にかけられないネタ。今回は勝ち負けではないから、単純に、一番やってみたい噺を選んだのだ。コギャルがカラオケボックスで宇多田ヒカルに挑戦するようなものと考えていただいてよい。また、(残念なことだが)「枝雀追悼落語」の意味も込められている。
 この噺は「寝床」と同様、素人芸のひどさということがテーマになっていて、それを素人のおいらが演じるわけだから、これほどわかりやすい話はない。実際、最後などは浄瑠璃の文句をど忘れしてしまい、なんとかサゲまではたどり着いたものの、ボロボロの高座。この会で落語をやるのは4回目だが、こんなになさけなかったのは初めて(笑)。

 初登場の小ざるは「千早振る」。前座噺とは言え、小さんの得意ネタでもあり、さすがに柳家一門の伝統を受け継いだ見事なもの。小三治が目をかけているだけのことはある。客席からは「扇辰よりうまいのでは?」という声も・・・。


上智大卒という異色の経歴を持つ小ざる

 トリの扇辰は、前回が(努力賞を決定付けた)「三井の大黒」だっただけに、いまさら「長屋の花見」でもなかろう、まして桜の季節でもなし・・・と首をかしげる演目だった上に、マクラこそ客席を沸かせたが、肝心の噺に入るといつものキレも迫力もなく、聴いているこっちが納得いかないデキだった。

 あとで席亭の早川から聞いてわかったことだが、その日の昼間、兄弟子の死というショッキングな事件があったのだそうだ。芸人は親が死んでも高座に穴を開けてはならないとよく聞くが、まさにこの夜の扇辰は芸人魂を奮い立たせての高座だったに違いないのだ・・・。