1977年4月、6枚目のソロアルバム「オーバー」発表。
曲は前年の2月に書かれ、6月27日から7月14日にかけてレコーディングされた。
発売が遅れたのは、グループ内でのトラブルと、それに伴うメンバーチェンジの影響と思われる。(つまり、レコーディング時は第4期VdGGで、発表されたのは第5期「VdG」になってからなのだ。)
「オーバー」には、「H to He」のレコーディング時までVdGGのメンバーだったベース奏者のニック・ポッターと、ストリング・ドリヴン・シングのバイオリン奏者、グラハム・スミスが参加している。
つまり、「オーバー」はすでに新生VdGのメンバーになっているのだ。
これはいったいどういうわけか?
VdGGの76年のトラブルとは、一説にはグループが買い込んだ機材などに起因する経済的問題だったとも言われているが、とにかくこの結果、12月にキーボードのヒュー・バントンが脱退してしまう。
また、サックスのデヴィッド・ジャクソンの場合は、プライベートな理由でミュージシャン活動から一時期遠ざかることになる。当時、彼には生まれたばかりの子供がいて、1年の大半をツアーで過ごす生活に耐えられなかったのだと噂されている。
つまり、ヒューとデヴィッドがグループを抜けた穴を、「オーバー」に参加したニックとグラハムが埋めることで新生VdG(ヴァン・ダー・グラーフ)が誕生したのだ。
「オーバー」は、はからずも新生VdGの「The Quiet Zone / The Pleasure Dome」のサウンドを先取りした形になったわけである。
しかし、この「オーバー」が失恋の曲のオンパレードであることから、プライベートでもっとも大きなトラブルをかかえていたのはハミル自身だったのではないかとも推測される・・・。
オーケストラを導入した"This Side of the Looking Glass"は圧巻。
この曲は1984年のアルバム「ラブソングス」(過去の作品の中からラブソングを選りすぐってリメイクした作品集)でもラストを飾っている名曲である。
ちなみに、ジャケットに写っているギターが、例の「メウルグリス3」であろう。