別府八湯温泉ミーティング 風呂端会議 / 観光の夕べ
2001/07/10 東京プリンスホテル
文・としちん
別府市観光協会からルミチンに、東京で開催する別府観光懇談会への出演依頼メールが届いたのは約1ヶ月前のこと。
この懇談会、実は毎年行われているのだが、国土交通省のエライさんや旅行代理店、旅行雑誌関係者を対象としたもので、普通、我々一般人は参加できないイベントなのである。
今回の企画は「風呂端会議」という、「古くて新しい別府八湯を、心底(あるときは異常なまでに)おもしろいと思っているヒトたちを、かなり誇張的に露出して新しい別府八湯を語っていただき、一見なんにも観光と関係ないフリーク話が、最後には別府に行ってみたくなるような展開」(出演依頼メールより)を目指すもの。
出演者は温泉旅行博士の藤田さんご夫妻、路地裏探索人の平野さん、温泉泥マニアの甲斐さんという錚々たるメンバー。進行役は東京会議でおなじみ、JTB研究員の久保田さん。
そんな中にルミチンが加えられたのは、おそらくニューツルタさんか野上本館さんの陰謀(笑)だろうと思われるが、彼女の役どころは「別府移住願望派主婦」。ちなみに企画の段階では「としちんの飛び入り発言」まで予定されていた。
しかし、偉い人ばかり100人ぐらい集まる会場で、そのような大役はとても無理であると、ルミチンは半泣きで「辞退する」とおいらに言った。でも彼女が「別府移住願望派」であることは事実だし、大好きな別府のキャンペーンのために一肌脱ぐチャンスを与えられたんじゃないかと言うと、彼女はあっさりとその気になった。
その後、ルミチンは東京と別府のスタッフの間でメールをやりとりして企画を煮詰め、今月5日の「東京会議6」のときにも久保田さんと打ち合わせをして、いよいよ本番を待つばかりとなった。
「雲井の間」にて出演者・スタッフの打ち合わせ。
控室での最終打ち合わせ。
ルミチンは、本番中、原稿を見ながら話をするつもりだという。
しかし、パネラーが全員浴衣を着用し、「風呂端会議」という趣向で行われる座談会だと聞いたので、おいらは原稿をもとに大急ぎでメモを作成し、それを進行役の久保田さんに渡した。
そのメモとは、久保田さんからルミチンへの質問を箇条書きにしたものだ。
つまり久保田さんの質問にルミチンが答えるという形で、ルミチンが次に何をしゃべればいいかを久保田さんにナビゲートしてもらう作戦である。これならルミチンは原稿を丸暗記する必要もないし、原稿を見なくても自然な感じでしゃべることができるはずだ。
会場入りまであと10分。久保田さんに協力してもらい、直前リハーサル。
ところが久保田さんの質問に対し、ルミチンはなめらかに答えることができない。
自分が書いた内容を思い出してしゃべればいいだけなのに、それができないのだ!
もう練習時間はない。いったいどうなってしまうのか・・・?
メイン会場「サンフラワーホール」へ。
おいらの席は三越物流の千晶ちゃんや温泉チャンピオンの郡司さんら、東京会議メンバーが陣取る最前列に用意されていた。
ステージには別府八湯の幟(のぼり)が飾られ、そのサオの部分にパネラーの大きな名札が付けられていた。みんな本名なのに、ひとりだけ「るみちん」と書かれているのがおかしい。赤ででも書かれてたら完全にお笑い芸人だ。
しかし、たしかに彼女は地球人を笑わせるためにやって来た火星人だから、予想外の大ワザを繰り出す可能性もある。
いよいよイベントが始まり、まず会場のモニターに、別府温泉を紹介する数分間のビデオが上映された。
それが終わると、パネラーがひとりずつ紹介されてステージに上がり、風呂端会議の始まり。
最初は藤田ラブラブ夫妻(写真上)のトーク。
奥さんの成子さん、実はこの人も全く緊張感のない人で、用意してきた原稿をまじめに覚えようとし始めたのは、やはり本番直前だった。
しかし間に合わなかったと見えて、けっきょく2人ともひざの上に原稿を置き、森首相の答弁のように、ほとんど原稿に視線を落としたままのトークに終始した。もっとも、2人とも読み方はうまく、内容もこなれたものだったので、それなりに聴衆にはウケていた。
結果はどう出るかわからないが、ルミチンから原稿を取り上げたのは正解だと思った。パネラーが次から次へと原稿の朗読ではつまらないし、ましてルミチンが藤田夫妻と同じことをやったら絶対に見劣りがする。逆に原稿なしでやれば、その存在感は大きくアピールできるだろう。
いよいよルミチンの番になり、久保田さんはお約束通り、おいらが書いたメモの一番上の質問をルミチンに浴びせた。
「ルミチンの一番最初の別府体験について聞かせてもらえますか?」
ところが、ここで全く予想外のことが勃発し、おいらも思わず「おおっ」と声が出てしまった。
「すいませんが、その前にお話しさせていただきたいことがあります」
なんと、ルミチンがいきなりアドリブをかましてきたのだ。
「さっきの別府のビデオにまだ感動してて、泣きそうなんです~~~」
これはウケ狙いではない。天然である。
会場は一気に爆笑の渦と化し、久保田さんも「さっきルミチンがハナをかんでたのは、緊張してたからじゃなかったんですね」と応えた。
おいらは落語会への度重なる出演で、人を笑わせることがどれほど大変なことかを知っている。中でも一番難しいのは、最初に客を「つかむ」ことだ。
しかし世の中には、全く無意識にこんな「つかみ」ができる天才がいるのだ。いや、やっぱり火星人だったのである!
久保田さんと、ひとりだけ自前の浴衣を着ているルミチン
そのあとも、心配していたよりはずっとまともにトークが展開されていった。なんて本番に強いやつなんだろう。
そして、ルミチンがしゃべる予定量の3分の2ぐらいのところで、主催サイドから「制限時間は絶対に守って欲しい」と言われていた久保田さんの判断で、マイクが次の平野さんへと渡され、最後は甲斐さんのトークで、無事に風呂端会議は終了。
客席からはT-GALAXYの久米さんがマイクで別府を熱く語った。
もっと時間があれば郡司さんやおいらにもマイクが回ってくるところだったが。
ルミチンもあとで「最後までしゃべらせてもらえなかった。もっとしゃべりたかったのに」と不満をもらした。
とても1カ月前に「できるわけないよ~」と泣きべそをかいていた人の言葉ではない。
甲斐さん(左)と平野さん / 別府温泉の泥いろいろ
応援に来てくれたはるちゃんとは1年半ぶりのご対面
風呂端会議のあとは「別府観光の夕べ」。
いきなり別府市長のあいさつから始まる本格的なもの。
しかし立食パーティーになると、別府から参加の栗田さんや鶴田さんも交えて、まさにオフ会の雰囲気。
ルミチンは超人気で、別府市観光協会の人たちから名刺をもらいまくっていた。
ミス別府ととしちん / 別府市長のあいさつ
阿部さん(左)と鶴田さん / 観光協会から最後の「三本締め」を依頼された稲本さん
パーティーは中華料理や握りずし、デザートまで食べ放題。
このときショックだったのは、郡司さんが食べていたケーキ。どこかで見たケーキだと思ったら、東京プリンスホテルに早めに到着したおいらとルミチンが、1Fのカフェでコーヒーとセットで1000円払って食べたケーキだった(-.-;)。
最後に、大勢の人を前にしゃべったことですっかり度胸が付いたルミチンは、帰りの電車の中でもパワーを持て余し、ずっと携帯電話でしゃべってるバカねえちゃんを一喝していたことを付け加えておこう。