ウラジオストック日記二日目

 
7月7日。
眠れないのでもう4時に起きて、髪を洗い、6時から朝食だというので、もう6時に下のレストランへいってみました。
「ピザ」という名前のレストランなだけあって、熱々のピザがあって、あとはパンとかベーコンとかコーヒーにジュース。ささやかなものしか並んでいません。
テーブルにあるこのメニューの中から注文していいみたいですよと、知らない日本人の男の人が教えてくれました。
注文していいと言われても、この熱々のピザがあれば、特に欲しいものもなく、そのままあるものだけ食べて、でもメニュー表だけもらって、食事を終わりました。
そして後でマリーナさんに会った時、そのメニューの中で「スクランブルエッグ」と「オムレツ」の所だけ、印をつけてもらいました。

10時にホテルのロビーに集合したのは、私たちとマリーナさんと、そして運転手のワジムさんだけ。他の旅行者と一緒の車になりますと言われていたんだけど、旅の最後まで、ずっと私と母だけにガイドさんが付いてくれました。

最初は中央広場にいき、金曜日だからかそこに市場が出ていたので、市場をちょっとみて。その後で、ヒュンダイホテルへ両替にいきました。
100円で24ルーブル、ねえマリーナさん、私はお土産をちょっとと、あとロシア語をしゃべる時計を買えればいいの、幾ら両替したらいいと思う? と尋き「なに、時計が買いたいの?」と言うのでウラジオ点字図書館の電話番号を見せ。そうしたらマリーナさんはもう電話をかけ始めたので、結局アドバイスをもらわないまま、4千円両替しました。
私のロシア語の勉強のためにも、点字図書館へ自分で電話しようとも思っていたけれど、かけてもらってよかった。あれだけの話は、私にはとても聞きとれないと思いました。
マリーナさんの早口のロシア語を、後で訳してもらったところによると、図書館に時計はない、モスクワからとりよせなければだめだ。もし中国製のでよかったら、市場に売っている。モスクワのアドレスを教えようか? と言うので、いえいえ、ウラジオでみつかったら買いたいんですと言って、教えてもらいませんでした。実はハバロフスクの知り合いにもう頼んであるので、同じのを買いたくなかったんです。
「中国製のは、熱を加えるとこわれたりするよ」とワジムさんには言われたんだけれども、私はなにもわざわざ熱を加えたりしない(^_^;)。後で市場へ買いにいくことにして、とりあえず観光の残りをすることにしました。

次にいったのは、展望台でした。
とにかくウラジオは坂が多い町、ということは階段も多いですね。
その階段を、はーはー言って上がって写真を撮り、帰りはケーブルカーで下りてきました。
マリーナさんは今度は、中国製の時計がどこで売っているか、どこかへ電話をかけて尋いています。早口のロシア語はもちろん分からないけれど、私のことを話しているな、というのは分かるものですね。

次は、これもウラジオ観光のパンフにかっならず載っている、であろう、潜水艦の博物館に入りました。
動かない潜水艦が、そのまま博物館になっています。
ところがこれが狭くて暑くて、中国人の観光客がうるさくて、ちょっと奥へ入ったところで、もういいわと出てきました。

次は、毎日お昼の12時になると、大砲の音が聞えるという所へいきました。
べんちに座ってずうっと待っていて、やがて大砲の音にびっくりしつつ、携帯に録音してきました。

お昼にはまだちょっと時間があるということで、ナーベルジュナヤ通りを散歩して、海の水もさわりました。
日本海だから、まあ珍しくもないけれど、ナーベルジュナヤ、つまり「岸辺」という意味だけあって、海がすぐそばだったんです。

それからウラジオストック駅の中のレストランに入りました。
最初はきゅうりと山菜のサラダ。
次は魚のスープ。
魚の小骨があまりに多いので、じゃが芋だけ拾って食べました。
なんの魚か分からないけれど、味は銀鱈にとっても似ていました。
メインは、魚のチーズ焼きとマッシュポテト。
魚は味が全然なかったけれど、上にかかっている、しめじの入ったチーズのソースがすごく美味しかった。
デザートは、スコーンのようなケーキ。
美味しかったけれど、お腹いっぱいで食べきれませんでし た。

食事の後は、ここはシベリア鉄道の始発駅なので、駅の中を散歩して、ハバロフスク行きという電車の前で写真を撮りました。
シベリア鉄道は9288キロということで、その9288と書いてある所でも撮りました。
それから、なんだか歩きながら、マリーナさんといろんな話をしました。
ほとんど日本語だったけど(汗)

どうもその辺りで、旅行社が決めた観光は終わったようでした。
時計を探しに市場へいこうと言われ、市場へいきました。
屋根がある市場で、ほとんどスーパーとかわらないじゃないのと言ったんだけど、いいや、スーパーじゃない、市場だと言われました。でも、ほんとスーパーに似ていたなあ。
ここはどうも食料品ばかりで、時計はなさそうで、出ようとしたら、母が「オリーブの缶詰めが食べたい」と言い出す。でもマリーナさんが、なぜか「スーパーで買いましょう」と言って、市場を出ました。
次は「キタイスキー ゴーラデュ」というお店にいきました。
ここは、ものっすごくいろいろな中国製品があります。
傘でしょ? スタンドでしょ? あと、説明はされなかったけれど、ものすごくいろんなものがあるみたいでした。
ここに私の探す、ロシア語を話す時計があるということで、マリーナさんは地下へいきました。
私と母は、待っていればよかったんだけど、ちょっと私たちも地下へいってみようと、階段を下りてみたら。ものっすごく細い通路が、四方八方に広がっていて、どこにマリーナさんが居るか、もう全然分からない! ついでに出口も分からない! やっと階段を上がって外へ出たら、そこは全く違う出口でした。

私は実は高校3年になって、ものすごく一生懸命、学校から家に帰る訓練を受けました。
その時に担任に言われたことは「迷ったら、迷う前の場所に戻れ」それができなかったら「その場から動くな」でした。
もう、この知らない出口で、じっと待つことにしました。
やがてマリーナさんとワジムさんが、私たちをみつけてくれました。
「私は、かけた」とマリーナさんが言う。きっと「走った」ということなんだろうなあ。

こうして、150ルーブルで音声の出る時計が買えました。
大きさは、前に持っていたロシア語の時計より少し大きいくらい、葉書より少し小さいくらいです。

また車に乗って、今度は食料品ばっかり売っていそうなスーパーにいきました。
ここでは、マリーナさんが「美味しい!」と勧めるお菓子や、母の望むブラックオリーブの缶詰め、その外、チョコレートをいろいろ買いました。
「そんなに買ってお金は足りるの?」と言われて、はたと気づくと、600ルーブルくらい買っていました。
ところがこのブラックオリーブの缶詰め、日本の缶詰めと違ってものすごく美味しかったんだそうです。私はオリーブは食べないから知らないけれど。
そして、マリーナさんお勧めのお菓子、前に「ナルニア国物語」の映画をみた時、エドモンドという登場人物が食べたがって食べたがって、魔女からもらっていた「ターキシュデライト」でした。
あの映画をみた頃、どんなお菓子なんだろうってすごく気になっていたんですが、すっかり忘れた頃に口に入り、ものすごく美味しい、というほどではないけれど、映画に出てきたものが食べられて満足でした。

3時過ぎにホテルに帰り、ちょっとだけ休んで、4時過ぎにホテルを出ました。
ロシア人の家庭で、夕食を食べるツアーです。
ちょっと渋帯があって、5時過ぎに着きました。

ロシア人の家庭におじゃまする時は、私はアパートか、または山小屋のような別荘にしかいったことがありませんでしたが、ここはどちらでもなく、ものすごく広い2階建ての一軒屋でした。
庭も広くて、野菜や野イチゴを裁培しています。
イチゴを食べていいわよと言われ、甘酸っぱいのを食べました。

家に入って、2階から下からみんな見せてもらいました。
ものっすごく豪華。
だれか子どもさんがパソコンで遊んでいるのか、モデムの「ピー」という音もしました。
「日本人がきてるんだから、かたづけなさい!」と言ったかどうかは知らないけれど、だれかが子どもをどなっている声まで聞えて、なんか急に親近感がわいたりして。
台所には、いろんな国のお皿が飾ってありました。
ここの家の奥さんが、旅行が趣味で、いろんな国へいってはお皿を買ってきて飾るんだそうな。
今その奥さんは、スペインを旅行中でお留守だった。
きっと間もなく、あの台所にスペインのお皿が加わるんだろうなあ。

ひととおり家の中をみた後、庭にある木のべんちに座って、そして木のテーブルでごはんを食べました。
最初はボルシチ。
モスクワの、私がホームステイしていたナージャさんだったら、ここにドバーッと塩を入れるだろうなあと思う、そういう薄味でした。
次のじゃが芋のバター焼きも、薄味で美味しかった。
ところがピロシキは、私の苦手なザウワークラウト入り。
しかしだいたい、スープとじゃが芋でお腹いっぱいになっていたので、ピロシキは残すことにしました。
最後は、野イチゴだかなんだか分からないけれど、においのするお茶。
これも飲めなくて、ごめんなさいねと言って水を飲んでいました。

「少し散歩をしましょうか?」マリーナさんがそう言った。
散歩? もういいよー、お腹いっぱいだし、帰りたいよーと思ったんですが、実はさっきの菜園を歩かないと、車の所へいけないんですね。車止めがあって、そこから奥へは車が入れないんです。
「ウラジオストックへいくなら途中まで乗せていってよ」と、そこの家の一人の女の人に言われて、彼女も一緒に車に乗って、どこだか分からないけれど、ここでいいと降りていきました。

夕方7時15分にホテルに着き、じゃあね、マリーナさんとは明後日ね、とお別れをして、部屋に戻ってきたら。暑い!西陽がガンガン射しています。
この部屋、クーラーほんとにないの? と私が言い、母が尋きにいきました。
ジジュールナヤさんという、ホテルの各階にいる女の人「ちょっと待ってね」と言って、どこかへ去っていったとのこと。
なんで? 自分の勤めているホテルの部屋にクーラーがあるかないか知らないの? と思っていたら、やがて私の部屋へ...扇風器を運んできました。
首を振るたびに「ガタガタガタ」と音のする、すごくにぎやかな扇風器と一緒に、一夜を過ごすことになりました。ま、ないよりはいいか。