末広亭余一会

 
「雑俳って書いてあるよ。落語が聞けるかどうかは分かんないわよ」
私の友達で、いつも落語に関する活字を私の代わりに呼んでくれる人にはそう言われたけれども、余一会っていうタイトルだけは前から知っていたし、どんなことをするのかみてみたくて、それに夜にもJAL名人会があったし、いってきました。

春風亭ちょうやさん(一朝門下だそうですね)「子ほめ」番頭さんの年を聞く所はすっぱりカット。なるほど、こういうやり方もあるのか。
りんたろうさん「つる」
一朝さん「家みまい」
さん喬師匠「かわりめ」末広亭の、あの解説が聞けました。
馬桜さん「猫の皿」と踊り「なすかぼ」私にも、もちろん母にも踊りは分からないんだけど、仕草が奇麗だということです。
喜久亭寿楽さん「権助魚」だれこの人、なんにも知らない人でした。汗。
小燕枝(こえんし)さん「強情灸」肘の内側に灸を乗せる、柳家の形でした。
雲助さん「夏どろ」
小里ん(こりん)さん「たらちね」
志ん橋さん「岸柳島」

中入り

ここで、じぐちをお客さんに募集した、その優秀作が発表されました。
発表するのは小ゑんさん。
昼席で募集したのは、流行歌のタイトルをもじって、おもしろい言葉を作って下さいというもので、優秀作は「ぺてんしの誘惑(天使の誘惑)」
例文として作られた扇遊さんのは「あの金を払うのはあなた(あの鐘を鳴らすのはあなた)」などなど、とても憶えきれませんが、一番笑ったのは「ベッドで手錠をかけないで(ベッドで煙草を吸わないで)」これを作った人、という問いかけに、手を挙げたのがなんと若い女の子だったのがおかしかった。
優秀作の作者には、立花門下の寄席文字の専門家が、色紙に一文字だけ字を書いてくれるんですが、右近さんだか左近さんだか、名前が憶えられなかったんだけどその寄席文字の師匠が、この若い女の子に「錠の字でも書きましょうか?」と言ったのが、非常に笑えました。終わってから分かるじぐちの意味。私は、意味が分からず応募できませんでした。汗。

馬生さん「小言念仏」と踊り、うちの母が「いい男だ」と言ってました。
扇遊さん「ねずみ」扇遊さんは最近、三井の大黒がブームらしいという噂を聞いたんだけど、同じじんごろうものでもこっちでした。私としては「三井」の方が好きなんだけれど、でも扇遊さんで聞く「ねずみ」は初めてだったし、会う度に演目を替えてくれて、ありがたかった。
さて次が落語裁判。まず被告の(笑)柳家小ゑんさんが「ぐつぐつ」という落語を演ります。あるおでん屋さんの、おでんの具たちの話。恋あり、喧嘩あり。そして最後に売れ残ったいかまきさんは、箸でつままれて「さ、夕ごはんだぞ」「ワン」で終わり。私の好きな噺の一つです。
それに対して裁判長の小燕枝さんが「これはいつ頃の噺なの?」とかいろいろ聞いて、黒板に板書されます。
次に、検察官側の雲助・馬桜・一朝さんが「なんで大正3年に、ラッキーポッキーケンタッキーなんて言うんだ」とか「なんで大正3年に餃子巻きがあるんだ」「なんでおでんの具がしゃべるんだ」と、落語の中の台詞とかでおかしいものをいちいちチェーック。
それに対して小ゑんさんと、弁護側の扇遊・馬生・志ん橋さんだったかな?弁護人の3人目に自信なし。そういう人たちが「いえケンタッキーなんて言ってない、せんたっきーと言ったのだ」「なんで具がしゃべるかなんていう質問こそが愚問だ。落語の中では狸でもしゃべるじゃないか」という、わけ分かんない弁護をするのですが。餃子巻きの話の時に雲助師匠が「これは私は好きだ」と言ったり、扇遊さんが「大正3年にセブンイレブンなんてない」と言い、おまえは検察官だろう、弁護人なら弁護しろ、なんてつっこみを入れられていました。
「ぐつぐつ」がどんな落語か知らないと、ちょっとこのおもしろさは伝わり難いかもしれないけど、まあそんな感じで、じりじりと終演の4時半がせまり「あとなんかあったっけ?」と検察官。「ないない、私は帰る時間なんだ」と心の中で叫ぶ私。
最後はばいしんいん(お客のこと)の拍手で、弁護側優勢になったにもかかわらず、裁判長の一存で、被告は有罪になりました。
さて、被告人はなにか芸をしろということになって、小ゑんさんは「私ができるのははんだづけくらいだ」と、またわけ分かんないことを言い、それならと、扇遊さんが芸をすることになりました。いよいよ帰れないじゃないか。
扇遊さんはしばらく「じゃあねえ、うーん」と考えていましたが、相撲仁句を歌う決心をされたようで、ああよかった、落語までで帰らなくてよかった。相撲仁句の中では一番平凡な「当地興業」の歌詞を、歌ってくれました。歌唱力はとても市馬さんにかないませんが、まあ市馬さんにはだれもかなわないと思うし、私にはとってもとっても、いい声に聞えました。

会場には中学生か、ともすると小学高学年くらいの女の子がいて、よく笑っていたけれど、高座のおじさま方(落語家さんのこと)の顔ぶれを考え、だれを目あてに来たのか、とうとう分かりませんでした。にこ。ミルク。