上海帰りのミル その3

 
朝食のバイキングにもコーヒーはあったけれど、夕べと同じエスプレッソのにおいがしたのでもらわないことにして、8時出発。この日最初にいったのは、拙政園というお庭です。
昔なんとかという人が、政治のいろんなまずいことをどんどん書いたので、弾圧を受けて引退し、もう政治なんてやだなと、ここに庭を作りました。
拙という字は、中国語で「まずい」という意味があるんですって。
私も昔、今以上にパソコン仲間との集まりにいって、その出来事を書くと、一緒にいった人から「そんなに書かないで」と言われたことがありました。でも書かないと、その場にいない人には楽しい雰囲気が伝わらないものね。書けることは、これからも書きたいと思います。だからって「あああいつに書かれたらいやだから、なんも教えないことにしよう」なんて言わないでね。(^_^;)

次はその拙政園のすぐ隣りにある、刺繍工場へ。
「ご紹介していただけないので自己紹介しますと、私の名前はこと申します」
こさんという名前を聞くまでは、日本人かと思う奇麗な日本語でした。こさん以外にも、みんな日本語が上手だった。
昨日のホテルに一人くらい働いておいて欲しかった。(^_^;)
粗州は刺繍が有名な所、両面刺繍といって表が猫なら裏も猫というもの、これは表を刺繍しながら裏は決して見ないで縫うんですって。
他に両面異繍といって、表が猫で裏が犬、なんていうものもあります。
昨夜の夕食の会場に飾ってあった、湖にお船が浮かんでいる景色の絵、みんなが絵と思っていたら刺繍だったんだけれど、それはこういう所で作られているんだなと今頃納得。
18万円の虎の刺繍を買う人がいて、その交渉をみんなで待つ。
もう一人、30数万円の刺繍を買おうかどうしようか迷う人がいて、やっぱしみんなで待っていたんだけど、買わないと言い出し、買わないんならさっさとしてくれとも思いながら、1時間後にお店を出ました。次の所へ早くいきたいわけでもないけど、杭州までバスで2時間半だから。

さよなら粗州。だれがまたくるか(^_^;)
1時15分頃、杭州のお昼ごはんのレストランに着きました。
お昼になにを食べたかは、あまり憶えていません。
但し一つはっきり憶えていること、それはスプライトのコップを持つ私の手に、お茶をつぐウエイトレスさんのやかんがぴったりくっついたこと。熱ーいと叫んで、すぐトイレにいったけれど、こんな時にかぎって水道はお湯しか出ません。いつも洗面所なんて、水しか出ないのに。それからはやかんを持った人がきたなと思ったら、パッとテーブルから手を引っ込めることにしました。

杭州最初の観光地は、六和塔です。
杭州はむかし洪水が多かったので、こういう木造の塔を作って、防ごうとしたんですね。
外からみると13階なのに中は7階というおもしろい建物なのですが、この時ちょうどものすごい雨で、バスから出るのもいやだったくらい。でもバスの置き傘を借りて、塔の下までは行ってみました。塔に上りたい人はどうぞ、20分後にここに集合と言われ、私は下でけんけんちゃんと話したり、絵葉書を買ったりしていました。けんけんちゃんはハルピンの出身だというので「私は次はハルピンにいってみたいの。赤い月っていう小説は知ってる?あれを読んだから」と話すと、赤い月を彼女は知らないというので、戦後の日本人がね、ハルピンから命からがら逃げてきてね、なんていう荒筋を話したら「それはおじいちゃんおばあちゃんの話、私たち若い人は知らない」と言うのです。どうしておばあちゃんなの?両親とかではないの?と思ったら、けんけんちゃんのお母さんが44才だというので、なるほどと思いました。
絵葉書は10枚20元、粗州でもう10枚買っちゃったから、もっと少ないのはないの?と聞いてもないというし、10枚もいらないわといったん背中を向けたら、じゃあ15元にするという。思わず買ってしまったけれど、もうちょっとねばればよかったかな?しかし集合してバスに戻る時には雨が止んでいて、よかったなと思いました。

次は西れい印社という所へいきました。
このれいという字、水と令が一文字になっているらしいんだけど、どうしてもパソコンに出せません。ボランティアさんに問い合わせたら、どうも日本の字にはないんではないかとのことでした。西れい印社とは要するに判子屋さん。一文字30元から50元で掘ってくれるそうです。「林さんや森さんはお徳です」には笑ってしまった。料金が安上がりになるから。私は18年前に、北京で判子を作ったので、ここは見学だけ。

次は西湖です。
太湖ほどではないけれど、それでも水にはとても手は伸ばせない、立派なお船に乗りました。
ここは私の目的地ではないし、おんなじことをごねるのはいやなので黙っていたのに、張さんはちゃんと水を持ってきてくれました。やった。太湖のよりずっと冷たくて、そして奇麗とのことでした。他の人もさわったし、また「見るだけでいい」という人もいました。
西湖には島があったり橋もあって、実は三つに分かれています。
その湖を一周半くらいして、船から降りました。

「上海から遠くなるほど料理はまずいんですよ」なんて訳知り顔の人がいたけれど、私は杭州での夕食で食べたちゃーはんが、この五日間で一番美味しいちゃーはんでした。ちゃーはんは何度となく食事に出たけれど、どれも美味しいというわけではないんですねえ。添乗員さんに頼んだらおかわりしてくれました。食事はいつもそうだったんだけど、テーブルにどんと運ばれてくるものを、みんなで小皿にとる中華風だったので、全盲の、加えて食べるのが遅い私は、いつも損をした気分をぬぐえず、バイキングの方がよほどよかったなと思います。でも五日間ずっと、昼と晩はそういう中華風の食事でした。

ルームサービスは昨夜でこりたので、夕食のレストランでコーヒーを頼みました。
お金は30元で、昨夜の方が実は安かったんだけれど、こっちのコーヒーは普通の苦さで、昨夜よりずっと美味しく感じました。
ところでこの旅行に申し込んだ当初は、杭州は予定に入っていませんでした。三泊のはずが急きょ4泊になって、杭州が加わっても同料金ということできたんだけれど、そのせいか(^_^)杭州のホテルの部屋が一番狭く、手をのばすとだいたい欲しいものがみつかって、私にはありがたい部屋でした。
部屋が狭くて喜ぶなんて、私くらいでしょうねえ。