2004/7/8 第14回扇辰落語会

命にかかわる猛暑の中で開催された「きららの仕事・第6巻」発売記念「納涼落語会」。

今回は「はん亭」の蔵の間にて、中山さんの三味線、前座さんも登場するという本格仕様。

特別に挨拶に現れたのが「はん亭」の若旦那。
大の落語ファンだそうで、挨拶もまるで一編の落語のよう。
もし「ラクゴバトル21」があれば、おいらの最大のライバルになりそうだ。ウヒャヒャ

前座の柳亭小みちさんのネタは「狸の恩返し」。
女性でありながらバラエティ指向ではなく、古典を究めようとする姿勢は、女流すし職人・きららの単行本の発売を祝うこの会にふさわしい。

真打としての風格が出てきた扇辰師匠は「明烏」。
廓噺は「幾代餅」以来だが、「明烏」では花魁のセリフは「若旦那、起きてくんなまし」の一言だけで、前半は大旦那と若旦那、後半は若旦那と源兵衛、太助のやりとりがほとんど。出てくる女性は遣手(やりて)のオバサンだけであり、色っぽい部分は全て客のイマジネーションに委ねられている。
扇辰は写実的(演劇的)な芸風なので、花魁が前面に出てくる噺よりはこの方がいいかもしれない。けっして扇辰の花魁がまずいというわけではないが、流れが悪くなるのである。
たとえば故・志ん朝師匠の廓噺に出てくる花魁は、花魁というより志ん朝そのもの(笑)。それでも花魁だとわかるし、おもしろいし、色っぽい。
これが落語と演劇の違いなのではないか。

しかし、おいらは今までさんざん扇辰落語を「笑えない」とけなしてきたが、今回の源兵衛と太助がじゅうぶんおもしろかったのは、まさに演劇的に、精密に演じたからであろう。扇辰のキャラを考えると、進むべき方向としてはこれでいいのかもしれない。


扇辰落語会での扇辰師匠の演目一覧