Nadir's Big Chance 1975

VdGG復活を目前にした1975年1月、ソロ5作目にして最大の異色作「ネディアーズ・ビッグ・チャンス」が発表された。なんと本作はパンクである。
前年の9月26日にキング・クリムゾンが解散表明、12月にはピーター・ガブリエルがジェネシスを脱退。たしかにプログレは深刻な危機に直面していたが、パンクがイギリスを席巻するのはまだ3~4年先の話である。
ジョニー・ロットンやデヴィッド・ボウイーがハミルを信奉していたというウソのような話も、実はハミルがパンクの元祖であったすれば納得できる話ではある。
リッキ・ネディアーとはハミルの「アルター・エゴ(別の人格)」で、永遠の16歳であるらしい。
本作に収められたパンク・ソングとバラードの全ては、ハミルというよりもリッキ・ネディアーの作品なのだそうだ。
たしかに、プログレとは完全に一線を画した、エネルギッシュな曲が並び、エレクトリックギターも本格的に使用されている。
その中で、"People You Were Going To"は、VdGGの記念すべきデビューシングルをリメイクしたもの。
また、"The Institute of Mental Health, Burning"はクリス・スミスとの共作、"Been Alone So Long"はクリス・スミスの単独作品なので、この2曲もVdGGデビュー当時のレパートリーだったかもしれない。

"Shingle"や"Airport"は、ハミルの静かなバラードを初めて「いいなあ」と思わせてくれた曲。
きっと、この作品にハマった人がVdGGの解散後もハミルのソロを買い続けたファンなのだろうなあ。