VdGG 初来日公演

2008/06/29 渋谷O-west

3月12日

VdGGのチケットが、例によって「絵入り封筒」で届く(初日カバーかっ!)。
VdGGの新作のジャケットのようだ。

こちらはハガキ大のチケット。
なんと、整理番号9番!
なにしろ15,000円じゃ、最前列で見なきゃソンだからな!

 
6月29日(日)

公演当日の渋谷は、午後に洞爺湖サミット反対のデモ行進が行なわれていたらしく、夕方になってもまだ駅前は警察や機動隊で異常にものものしい雰囲気だった。
小雨が降りしきっているにもかかわらず、109周辺の混雑はすごい。みんなカサをさしているのでなおさら歩きにくい。

会場のO-westは円山町のラブホテル街のど真ん中、am pmの2階にある。
みんな雨に濡れたくないので、am pmの前の屋根のあるスペースは、入り口への細い通路だけを残し、開場を待つ200人ぐらいの客で立錐の余地も無い。
ふだんここにこんなに客が集まることはないと見えて、通行人は一様に「何事だろう」という表情でこの混雑をながめていた。

今回のチケットは15,000円もする。前回のハミルのソロが9,000円だったし、メンバーの頭数で割れば5,000円だから高いとは言えないのかもしれないが、よほど好きな人しか見に来られない値段であることも事実だ。
たしかにVdGGとしては初来日だし、もう何十年も追っかけてるファンにしてみれば記念すべきライブではあるのだけれども、いつまでもそういうマニアだけのものにしておくのももったいない話で、VdGGは高校生や大学生にこそ体験してもらいたいとおいらは思ってしまう。

17時ジャストに開場。
おいらはネット予約の受付開始と同時にメールを送り、整理番号9番をゲットしていたので、ステージの最前列を確保。バントンの真ん前で、ハミルからは遠い位置だが、かえってこれぐらいの距離の方が見やすいというものである。
17時半にピーター・ハミル、ガイ・エヴァンス、ヒュー・バントンがステージに登場。
しばらくの間、歓声と拍手が鳴り止まない。
3日連続公演の最終日で、熱心なファンは初日から通っているようだが、おいらのようにこの日曜日だけ選んで見に来た客も少なくないだろう。

セットリスト:

  1. Lemmings
  2. Lifetime
  3. All That Beore
  4. Sleepwalkers
  5. Over the Hill
  6. (We are) Not Here
  7. Nutter Alert
  8. La Rossa
  9. Gog
 10. Childlike Faith in the Childhood's End
(encore)
 11. Man-Erg

古い曲と新曲が半々ぐらいだった。
LPで「La Rossa」をリアルタイムで聴いていたのは32年も前のこと。
それを今ごろ、本物のVdGGが目の前で演奏している。
輪島と北の湖が目の前で相撲を取っているようなもので、こんな不思議なことはない。
もちろん、おいらはもう50になってしまったし、彼らはもっとジイサンになっていた。
バントンなんて、目が小さくておいらのお父さんそっくりだし、エヴァンスもおよそロックミュージシャンという風貌ではなく、どう見ても浅草で煎餅でも焼いてた方が似合いそうなジジイである。
ハミルはソロで何度も来日しているので特に違和感はないが、むかし千秋楽で「ヒョウ・ショウ・ジョウ」を読んでいたパンアメリカン航空のオジサンの雰囲気にますます近づいてきている事実は否定できない。

ニューアルバム「トライセクター」からの曲は、最初からこの3人でプレイするために書かれたものだからそれほど無理をしなくてもいいようにできているが、「ポーンハーツ」「ゴッドブラフ」「スティルライフ」時代の曲を演奏するということは、まだ20代だった頃のパワフルなステージを再現しなければならないのに加え、脱退したデヴィッド・ジャクソン(サックス)の穴まで、キーボードやギターで埋めなければならない。

しかし、この人たちはそれをやりとげた。
バントンはともかく、ハミルのギターはお世辞にも上手とは言えないが、気持ちだけは十分に伝わってくる(笑)。
それに、「バンドの中」におけるハミルのパフォーマンスは、日本でしか彼のステージを見たことがないおいらには新鮮だったし、これを見るのはおいらの「夢」でもあった。

VdGGの曲は、正直、CDで聴くのはちょっとシンドイのであるが、ライブ会場という空気の中では、この暴力的な大音量が実に心地よい。やはり、中途半端な音量で聴くべきではないというのはあらゆるロックに共通する条件なのだろう。
彼らにとっては大きなハンデがあると思われた古い曲の方が、すばらしくよかった。
ジャクソン抜きでも、十分にVdGGの音だったことが驚きだった。
また、その中には、静かにシンバルを鳴らすときのエヴァンスの動きに「ジジイにしか出せない色気」があって、まるで古今亭志ん生が演じる花魁のようだったという、「現在のVdGG」ならではの楽しみもあった。この芸が見られただけでも最前列に座った値打ちがあったと思う。

もういつ大地震が来ても悔いはないなあという体験がまたひとつ増えたコンサートの終了後、ミクシイのVdGGコミュに参加しているKOWさんのお誘いで、お友達との飲み会に参加させてもらい、近くのバーで「ハミルの長寿を祝う宴 (笑)」を催した。
ハミルぐらいギターが上達しない人もめずらしいねという話から、ハンガリーのプログレ情報まで、3時間近くいろんな話題で盛り上がり、とても楽しかった。みなさん、どうもサンキューでした!

主催者側のブログより、6/29の公演について。
「・・・オーディエンスもまったく素晴らしかった。アンコール前の最後の曲とアンコールで、メンバーが誰も音を出さないいわゆる「音の空白」を作る瞬間が二回あったが、そのどちらも完全なる無音が達成された。この音がないという状態は極めて重要だ。オーディエンスが音楽を良く理解し、一緒に「創作」することに参加するという意志の表れだと思う。VdGGも公演終了後、「二回の無音状態」を大変喜び、高く評価していた。Hughによれば 1970年代に演奏して以来初めてのことだそうだ。これまでは必ず誰かが叫んだり、拍手したり、何か音が出ていて、「無音の演奏」ができなかったと言っていた。」

アンコール曲とは"Man-Erg"であるが、再結成VdGGの最初のコンサート(2005、ロンドン)でも演奏されている。ぞのラストの1分はここをクリック

たしかに「無音」の部分で、拍手や「ウオー」という声が聴こえる(笑)。
しかし、もともと日本人の客は、フライング気味の歓声や拍手はほとんどやらない。
おそらく、相撲の立ち合いのように、他の客との呼吸をはかってしまうからではないか。
普通の格闘技ならゴングを鳴らしたり、審判の合図によって試合が始まるが、相撲にも行司は存在するものの、実際の試合開始はプレイヤーに委ねられている。こんなに珍しいスポーツはほかにはなく、外国人力士も最初はこれに戸惑うらしい。
日本人は子供の頃からテレビで相撲を観て育っているので、「相手と呼吸を合わせる」ことを自然に覚えていくのかもしれない(新説)。

ところで、あるファンがブログに掲載したセットリストによれば、"La Rossa"を演奏したのは、30日の原宿アストロホールでの追加公演を含めた4日間で、29日だけだったらしい。
超人気の曲なのに、VdGGのオフィシャルなライブ音源の中にも"La Rossa"は含まれてないから、ステージでは滅多にやらない曲なのだろう。貴重な体験だったなあ。