喜寿司(人形町 すし)

東京で1軒だけ選ぶならここ。
ネタのよさ、太巻やイカずし(印篭詰め)などの伝統的な仕事、店の雰囲気、そして親方の油井さんのカッコよさにいたるまで、全て申し分ない。

 1998年8月26日

 喜寿司で一度食べてみたかったのが「ちらしずし」。
 ここのちらしずしならまずかろうはずがなく、並は2500円、特上でも3500円(写真)はお値打ちである。

 写真では下のゴハンがどうなっているかわからないので解説すると、少し辛口の酢飯に海苔、カンピョウ、玉子焼、ショウガを刻んだものが混ぜ込んであり、もう、それだけでじゅうぶんおいしい。そしてその上にエビ、ホタテ、カレイ、アジ、穴子、イクラ、玉子焼、玉子のおぼろ、芝エビのおぼろ、イカ、煮イカ、ゲソ、タコ、カマボコ、シイタケ、キヌサヤが乗り、別添えで極上の中トロが3キレも付いているという豪華版。
 個々のすしダネに入念な仕事が施してあることは言うまでもない。エビも、どこの旅館の夕食にも出てくるエビと見た目は変わらないが、口の中に入れて噛みしめると、思わず顔がほころんでしまう。イカもアジも、全てが最高!
 

 1999年3月17日

 久々に喜寿司のカウンターで「おまかせ」注文。
 喜寿司ではツケ場に職人さんが3〜4人立っているので、油井さんに握ってもらうためにはちょっと工夫が必要である。その工夫とは、夜の部の開店時間である5時に予約を入れ、なおかつ表に暖簾が出ると同時に店に一番乗りし、油井さんの真正面のカウンター席をゲットすることだ。

 お通しは、ホシガレイとヒラメのキモ。和風フォアグラという感じで、バカうま!
 握りは、旬のカジキの腹の身(バカうま!)、ホシガレイのエンガワ、スミイカ、ホンマグロ(中トロ)、クルマエビ、煮イカ、煮ハマグリ、コハダ、タイラ貝、アナゴ、そしてタマゴ。
 あとは召し上がりたいものがあればどうぞと言うので、おいらは赤身の鉄火巻き。ルミチンはカンパチ、アオヤギの小柱、かんぴょう巻と飛ばしまくり、最後にふたりで芝エビのおぼろ(バカうま!)を握ってもらってフィニッシュ。
 これにホシガレイのアラの潮汁が付き、ビールを1本飲んで、2人で29960円なり。
 文句なくうまかったが、ウニ、赤貝、大トロなどが入っていなくてこの勘定は、次郎よこはま店より割高かもしれない。もっともこれは、昔からずっと同じ値段の次郎よこはま店を褒めるべきだろう。夫婦でやっているので、人件費がゼロだからあの価格を実現できるのだ。

 めちゃくちゃ脂の乗ったコハダ(九州産)や、絶品のツメで味わう煮イカ、煮ハマグリ、一瞬にして口の中でとろけるアナゴもすばらしかったが、やはりいちばんうまかったのはカジキである。
 普通、カジキというのはバカにされがちなネタで、一流のすし屋では置いてないところがほとんどだが、冬から春にかけて、銚子沖で「突きん棒(つきんぼ)漁」という、モリで一突きにして穫るカジキは全くの別格。赤身は高級料亭へ、そして腹の身(マグロで言う「トロ」の部分)は、こうして油井さんが買ってきて喜寿司で握る。これがもう、へたなホンマグロの大トロではかなわないほどのうまさ。甘味がなんとも上品で、脂がとても軽い。喜寿司でも、いつでも食べられるというものではなく、食べられたら超ラッキーの究極の寿司である。おいらも何度か食べているが、きょうのはキッツケも大きく、味も今までで最高! おいらもルミチンも「うますぎる」を連発!


ほんとうは、こういう字を書きます(七が3つ)